2020年4月1日から民法が改正され、不動産売買に関わる民法に大きな変更がありました。今回の民法改正で最も注目すべき点は瑕疵担保責任が契約不適合責任に代わるということです。この瑕疵担保責任が契約不適合責任に代わり、買主の権利がより強くなりました。今回は民法改正によって抑えておくべき下記の3つのポイントを解説していきます。
- 改正前までの瑕疵担保責任について
- 改正後はどのように変わったのか
- 今回の民法改正で注意すべきポイント
改正前の民法では瑕疵担保責任は隠れた瑕疵の責任を負う
民法改正前までは売主は瑕疵担保責任を負う必要がありました。瑕疵担保責任とは売主が自分の物件を販売した後に、隠れた瑕疵つまりキズや欠点などの不具合などがあった場合、売主は買主に対して物件の責任を負うことをいいます。隠れた瑕疵とは注意していても気が付かない不具合のこといいます。
そのため、買主に対して事前に通知している場合は瑕疵担保責任を負う必要がありません。もし隠れた瑕疵があった場合、買主は引き渡し完了日から3か月以内に売主に対して、通知をすることで瑕疵の修復に関する費用を負担してもらえました。
瑕疵の代表例
中古マンション(区分所有)における代表的な瑕疵の例として挙げられるのが下記の3つです。
- 雨漏り
- シロアリの害
- 給排水管故障
中古マンション(区分所有)においては上記以外の瑕疵、土地の瑕疵、共用部分に原因のある瑕疵については瑕疵担保責任の対象外となっていました。
民法改正で契約不適合責任に変更に
今回の民法改正で瑕疵担保責任がなくなり、契約不適合責任に変更になりました。契約不適合責任とは売主は契約内容に沿った物件を買主に提供する責任があることをいいます。もし、契約に沿った物件ではなかった場合、売主は買主に対して損害を補填する責任を負うことをいいます。
民法改正により注目すべき4つのポイント
今回の民法改正によって注目したいポイントは4つです。
- 隠れていない瑕疵の責任も負う必要がある
- 追完請求によって、後の修理義務を負う
- 追完請求の不備で代金の減額請求も可能に
- 契約解除が簡単にできるようになる
中古マンションの売買において重要な変更点があるので、しっかりと把握しておきましょう。
隠れていない瑕疵の責任も負う必要がある
瑕疵担保責任では、売主は隠れた瑕疵のみ責任を負う必要があり、明らかな不具合や損失については責任を負う必要がありませんでした。実際には隠れていた瑕疵か明らかな瑕疵だったかというのは立証することが難しく、裁判ではトラブルの原因の一つでした。
しかしながら今回の民法改正で、隠れていない瑕疵つまり目で見て明らかな瑕疵であっても、売主は損失を負担する義務があると変更されます。買主は明確な瑕疵でなくても、損失を補填してもらえるため安心して購入できる環境となりました。
追完請求によって、後の修理義務を負う
追完請求とは契約上に不備があった場合、補修や代替品などで契約どおりの形とすることを請求できる権利のことで、今回の民法改正で追完請求が新たに追加されました。
例えば契約の中に中古マンションとともに冷暖房の譲渡が入っていたけれども、壊れていた場合、売主は冷暖房を修理または交換する義務があります。ただし、買主は自由に冷暖房の修理や交換をする権利はなく、売主は買主に過度な負担を強いらないのであれば、売主の裁量で修理や交換することができます。
追完請求の不備で代金の減額請求も可能に
代金の減額請求も追完請求と同じく新しく民法に追加されました。追完請求は契約上の不備を契約の通りにする権利ですが、減額請求は契約上の不備を代金の減額によって解決させようという契約です。原則としては代金の減額請求よりも追完請求の方が優先されます。
代金の減額請求ができるのは主に下記の3つのケースです。
- 建物や設備の修理や交換ができない状況である
- 買主が建物や設備の修理や交換を拒否した
- 建物や設備の修理や交換をするのに時間がかかりすぎる
このような場合、買主は売主に対して、修理や交換に要する金額に相当する代金の減額を請求する権利があります。また代金の減額請求は追完請求と同じように買主の過失にて、設備や建物が損失した場合は代金の減額請求の権利は発生しません。
契約解除が簡単にできるようになる
契約解除が簡単にできるようになったのも大きなポイントです。以前までの民法だと「目的が達せられない時のみ解除ができる」となっていました。つまり、住む目的で購入したにも関わらず、住めるような状況ではなかったという状況の場合のみ、解除ができるということです。実際の判例では目的が達せられないというのは曖昧な部分があり、簡単には解除できませんでした。
今回の契約不適合責任では契約の内容と実際の物件の内容が違うだけで解除の要件となり、瑕疵担保責任時よりも簡単に契約が解除できるようになりました。
瑕疵担保責任および契約不適合責任はいずれも任意規定
契約不適合責任は瑕疵担保責任よりも買主に有利になっています。しかしながら、契約不適合責任と瑕疵担保責任はいずれも任意規定であることは注意点です。任意規定とは民法とは異なる内容にすることができる規定のことをいいます。つまり、契約不適合責任も瑕疵担保責任も特約を付帯することで、本来負うべき責任を免除することができるということです。
例えば、契約不適合責任の場合、本来であれば追完請求、代金の減額請求など様々責任を負います。しかしながら、特約の中に「売主に対し一切の追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償等の一切の責任を問わないこと」などという条項を設けることで、本来負うべき責任を免除することができます。
契約不適合責任になることで買主にとって有利な契約に
今回の民法改正は買主にとって有利な改正となりました。
- 隠れていない瑕疵の負担
- 追完請求に応じる必要性
- 代金減額請求に応じる必要性
しかしながら、任意規定のため免責可能な事項にもなっています。買主にとっては有利な契約となるため、今後の中古マンション売買では免責にするかしないかは重要なポイントとなってきます。
免責にする、しないに関わらず、中古マンション売買の際には契約不適合責任は覚えておくべき重要な事項となっています。既存とは異なる契約書になると思われますので、契約不適合責任の内容をしっかり理解して、契約書に落ち度がないように確認しましょう。
民法改正の影響で不動産経営にも変化があります。詳細は民法改正で不動産経営はどう変わる?損しないよう気を付ける4つのことで解説しています。