この記事では不動産投資法人のメリットについて解説しています。
- 不動産投資をこれから始めようと思っている
- 不動産投資をしているけど、法人を持っていない
という方はこの記事を最後まで読んで、不動産投資法人のメリットについて理解しましょう。
不動産投資法人は節税しやすい
法人の最も大きなメリットは節税しやすいことです。個人事業主と比較すると法人には4つの節税メリットがあります。
- 経費算入できるものが多い
- 赤字の繰越ができる
- 所得を分散して節税できる
- 高所得の場合は税金が安い
支払う税金が安くなる可能性が高いため、利益が大きくなればなるほど法人のメリットが増えます。
経費算入できるものが多い
法人は個人事業主と比較して経費算入ができるものが多いです。
- 事業主の退職金
- 車(個人事業主の場合は家事按分で全ての経費算入は困難)
- 社宅家賃
- 出張旅費
- 生命保険料控除(個人事業主の場合は最大12万円)
他にも法人の場合は個人事業主よりも経費算入できるものが数多くあり、節税しやすいというメリットがあります。一方で、個人事業主の場合は事業との関連性を明確に説明できない経費については認められないというケースが多いです。
- 事業に関係のない交際費
- 不動産投資に関係のない車のガソリン代
- 携帯料金や切手代などの通信費
中古マンション投資は事業に関係ある経費の範囲が狭いため、個人事業主の場合は節税しにくいです。出ていくお金が多い方は法人にした方が経費面でメリットがあります。
赤字の繰越が法人の方が長い
損失の繰越についても法人が優遇されています。
- 個人事業主の場合・・3年
- 法人の場合・・10年
中古マンション投資は減価償却の金額が大きいため、決算上赤字になることも多いです。そのため、個人事業主の場合、3年間の繰越だけでは損失を控除しきれないこともあります。法人の場合は赤字を繰り越せる期間が長いため、赤字の損失を控除しきれない可能性は低くなります。赤字を10年繰越すことで、税金を安くできるのは法人の大きなメリットと言えます。
高所得になる場合は税金が安い
高所得帯の場合は個人事業主よりも法人の方が税金面で有利です。以下、個人事業主と法人の税率を比較しました。
個人事業主
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
(参照:国税庁 所得税の税率)
個人事業主の場合はこの所得税に加えて
- 住民税・・所得に対して一律10%
- 事業税・・所得に対して5%(控除額290万円)
も課税されます。そのため、実効税率は15%~60%となります。
法人
法人税率 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.20% |
上記に加えて地方法人税・住民税・事業税が課税され、実効税率は所得に対して24%~34%程度になります。最大税率が個人事業主の場合は60%なのに対して、法人税は約34%となっています。そのため、高所得者、特に所得が695万円を超える場合は法人の方が、税率が安くなります。
サラリーマンは本業の収入と合算される
不動産所得は給与所得と合算して税率が計算されるため、中古マンション投資による収入が低くても、給与所得が高ければ税率が高くなります。
- 個人事業主は1,200万円に対して課税されるため、所得税が33%、住民税が10%、事業税が5%で計48%の税率
- 法人は500万円に対して課税されるため、法人税は約24%前後の税率
この場合、不動産所得は高くないものの、給与所得と合算すると課税所得が高くなり、高い税率がかかります。このように、サラリーマンの不動産所得は給与と合算して計算されるため、個人事業主の場合は税金面で不利になるケースが多いです。サラリーマンの副業として中古マンション投資をする場合は、法人を設立した方が節税メリットを得ることができます。
所得を分散して節税できる
法人は個人事業主とは異なり所得を分散して節税することができます。親族や配偶者などに役員報酬を分配することで所得税や社会保険料の税率が低くなるためです。
- 個人事業主で、1人で収入を受け取る場合・・手取が約1,300万円前後
- 法人で、500万円を親族4人で受け取る場合・・手取が約1,550万円前後
このように同じ2,000万円の収入があっても所得を分散することで、法人は税金や社会保険料を約250万円安くすることができます。役員にできる親族がいる場合、法人の方が所得税・住民税・社会保険料を低く抑えることができます。
不動産投資法人は資金調達をしやすい
法人の方が銀行からの資金調達をしやすいというメリットがあります。なぜなら、法人は個人事業主と比較すると、決算書の正確性が高く、信用力が高いためです。中古マンション投資家が利用できる資金調達の手法は主に2つありますが、いずれにしても法人の方が資金調達しやすいです。
- 銀行からの融資
- 国や自治体からの補助金や助成金
中古マンション投資は高額な資金が必要になるため、資金調達は必須です。今後規模を拡大させていきたいという考えがあるなら、資金調達しやすい法人で中古マンション投資を行うほうが良いでしょう。
不動産投資法人は短期売却によるデメリットがない
法人は短期売却によるデメリットがありません。個人事業主の場合は保有期間が5年未満の場合、短期譲渡所得として所得税・住民税として売却益の39.63%が課税されます。また、分離課税のため、ほとんど節税の余地がありません。そのため、短期的に中古マンションを売却した場合、キャッシュが残りにくいというデメリットがあります。
法人の場合は売却益に一律法人税が課税されるため、売却時期によるデメリットがありません。経費の算入も可能であるため、節税も検討することができます。将来、中古マンションの売却を選択肢の一つとして検討している方は、短期売却によるデメリットがない法人をおすすめします。
不動産投資法人が良いケース
中古マンション投資をする上で法人のメリットは4つあります。
- 節税しやすい
- 資金調達しやすい
- 給与所得と合算されない
- 短期売却によるデメリットがない
そのため
- 中古マンション投資でこれから大きく稼ぎたい
- 規模を拡大して、事業的規模にしていきたい
という方は法人にすることをおすすめします。具体的には、以下の4つの条件のいずれかに当てはまる人は、法人を検討すべき水準といえます。
- 家賃収入年間695万円以上を目指している
- 黒字決算で今後も推移する見込みが立っている
- 青色申告決算書上の所得が500万円を超える
- サラリーマンの副業ですでに給与所得が600万円以上ある
また、個人事業主から法人にする場合、個人から法人に中古マンションを移す作業をする必要があり、余計なコストがかかります。上記の水準に今は達していなくても将来的に達しそうという方は法人の設立を検討しましょう。
法人にする場合は株式会社だけではなく、コストが安い合同会社も検討すべき
法人にする場合は株式会社だけではなく、合同会社を検討することをおすすめします。合同会社は株式会社と比較して3つのメリットがあります。
- 会社設立費用が株式会社よりも約15万円前後安い
- 毎年の決算の公告がいらない(月6万円)
- 会社設立の手続きも株式会社より簡易的
合同会社はコストや手続き上の簡易性の面で株式会社よりも優遇されています。合同会社のデメリットは株式発行による資金調達ができない点ですが、中古マンション投資において株式発行するケースはほとんどありません。コスト面を重視する方は合同会社を検討すると良いでしょう。
不動産投資法人を始めよう
- 不動産投資法人は節税がしやすい
- 不動産投資法人は資金調達しやすい
- 合同会社なら安く法人を設立できる
サラリーマンなど不動産投資以外にも収入がある方は、不動産投資法人を設立した方が税金が安く済む可能性があります。不動産投資法人を持っていない方は、設立を検討してみると良いでしょう。
不動産投資法人を設立するうえで資本金をいくらにしたら良いのか分からない方は下記の記事で詳しく解説しています。