ローンを組む時には金融機関が不動産の価値を評価します。これを不動産担保評価と呼びます。この記事では不動産担保評価の目的や評価方法などについて解説しています。
担保とは
担保とは、ローンを返済できなくなった時に、返済金を回収するために金融機関が処分する資産です。不動産投資のためのローンでは、購入する不動産を担保にするケースが大半となります。ただし、担保があれば返済できなくても大丈夫ということではありません。
不動産担保評価の目的
不動産担保評価とは「いくらで売却できるのか」を金融機関が判断するために行われる評価のことです。ローンを組むと金融機関が審査をしますが、この審査には、ローン利用者自身のことだけでなく、担保にする不動産の審査も含まれます。
なぜなら、ローン利用者が返済できなくなった時に、金融機関は担保に入れた不動産を処分するからです。そのため、不動産がいくらで売却できそうなのかをあらかじめ確認しておく必要があります。この審査の結果として判定される評価を「不動産担保評価」と呼びます。
不動産の評価方法
不動産の価値は土地の価値と建物の価値とに分けられます。このため、金融機関は不動産担保評価の取得にあたり、土地と建物の両方を審査します。
土地の評価方法
土地を評価するための基準として多くの場合、国税庁が発表する路線価に基づいて判断されます。路線価は土地1㎡あたりの価格なので、土地の面積に路線価を掛け算した金額が、その土地の評価額です。
なお、土地の評価については、国税庁が発表している路線価以外にも、国土交通省が発表している標準値価格(公示地価)や都道府県が発表している基準地価が参照されることもあります。
それぞれの評価について、国税庁が毎年ホームページで発表していますので、確認してみるとよいでしょう。
※国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
※国土交通省 国土交通省地価公示・都道府県地価評価
建物の評価方法
建物は土地と比較して劣化することや、間取りや用途によって運用方法が異なることなどから、評価方法が複数あります。複数ある中でも金融機関で用いられることが多い、積算法と収益還元法という評価方法について解説します。
積算法
積算法は、以下の計算式で評価額を算出します。
再調達価格
再調達価格とは、その建物を新たに建て直す際にかかる費用のことです。建物には木造や鉄筋コンクリート造などの構造があり、この構造ごとに再調達価格は分かれています。
延べ床面積
延べ床面積とは、その建物の面積を合計した数値のことです。例えば2階建ての一軒家であれば、1階部分の面積と2階部分の面積とを合計した数値が、その一軒家の延べ床面積となります。
残存年数
残存年数とは、法定耐用年数から築年数(建物を建築後すでに経過した年数)を差し引いた年数のことを指します。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、資産の種類・用途・不動産であればその構造、によって耐用年数が定められているものです。税金の計算に使うため、財務省が定めています。建物における構造ごとの法定耐用年数は以下の通りです。
建物の構造 | 法定耐用年数 |
木造・軽量鉄骨造 | 22年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 |
収益還元法
収益還元法においては、以下の計算式で評価額を算出します。
投資収益
投資収益とは、想定される家賃から運用経費を差し引いた金額が用いられます。ただし余裕を持って、想定される家賃の7割〜8割に設定されることが多いです。
還元利回り
還元利回りとは評価額を求めるために金融機関が設定する利回りです。
積算法と収益還元法の使い分け
積算法では、実際に不動産を売却して処分するといくらになるのかを導き出すのに対し、収益還元法は、その物件が生み出せる収益を導き出す方法です。どちらか一方の評価方法だけで評価されることは稀ですが、積算法は居住目的の不動産に対し重視され、収益還元法は投資目的の不動産に対して重視されることが多いです。
掛け目とは
不動産と有価証券を比較すると、不動産には現金化の難易度が高いことや、経年劣化が発生するなどのリスクがあります。また、担保に入れた不動産を実際に処分する時に、金融機関は不動産業者を介して売却するのではなく、不動産を競売にかけます。競売は、一般的な不動産売買よりも取引価格が下がりやすいです。
金融機関は、このようなリスクを軽減しておくため、割り引いて計算する必要があります。金融機関によって割合は異なりますが、概ね査定額の70%前後を掛け目として評価されます。
不動産担保評価に必要な書類
不動産担保評価を受ける時は、主に以下の書類が必要です。
- 不動産登記簿謄本
- 建築確認通知書
- 固定資産税評価証明書
- 公図
- 建物図面
不動産登記簿謄本
不動産登記簿謄本とは、その不動産が自身の所有物であることを証明するための書類です。
建築確認通知書
建築確認通知書とは、その不動産を建築することが問題ないと行政から承認を受けた証書です。
固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書については、土地・建物に関する行政からの評価額が記載されている書類です。
図面
図面とは、不動産の間取りなどが記載されている書類です。
金融機関が現地で調査すること
不動産担保評価は書類の確認や収益の計算だけでなく、現地調査も併せて実施されます。現地で確認されるのは以下のような内容です。
- 内部調査(最低でも敷地内調査)
- 周辺調査(物件の周辺にはどのような建物が建っているかなど)
- 隣地との境界確認
- 物件の写真撮影
「駅から徒歩何分」などの情報は事前に提示されるものです。しかし、本当にその通りなのか歩いて確認することや、周辺環境や実際の劣化状況などを目で見て判断することなどが行われます。