マンションには家賃を保証してくれる契約があります。マンション経営を考えている人にとって【家賃保証】はとても魅力的なキーワードですよね。しかし家賃保証でトラブルが起きた事例は少なくありません。この記事では家賃保証のメリットとデメリット、そして家賃保証のトラブル事例などを解説します。家賃保証の実態についてしっかりと勉強することで正しい不動産経営が出来るようになりましょう!
- 家賃保証とは何か
- 家賃保証のメリットとデメリット
- 家賃保証のトラブル事例
マンションの家賃保証には2種類ある
マンションの家賃保証は2種類あります。
- 空室時の家賃を保証する空室保証サービス
- 家賃を保証し、賃貸管理も行うサブリース
それぞれどのような特徴を持つのかを解説します。
空室時の家賃を保証する空室保証サービス
空室保証サービスとは、保証会社に保証料を支払うことで、入居者が入らない場合でも一定の家賃を保証してくれるサービスのことです。しかし空室保証サービスで家賃を満額保証してくれるわけではありません。
空室保証サービスでは保証率が決められています。仮に保証率が80%で入居率が90%の場合、空室分の家賃は保証されません。なぜなら保証率を入居率が上回っているからです。しかし保証率が80%で入居率が60%であった場合は、差額の20%が保証されます。空室保証は満室時の家賃を保証してくれるものでなく、保証率を下回った分だけを保証してくれるサービスになります。
家賃を保証し、賃貸管理も行うサブリース
サブリースとは投資家が保有しているマンションをサブリース会社が借りる家賃保証制度になります。マンション経営や管理は投資家の代わりにサブリース会社が行ってくれるので、投資家の負担はほとんどありません。サブリースにより、投資家はマンションの空室の有無に限らず、固定の家賃収入を得ることが出来るので、とても人気のある制度です。
空室保証サービスと家賃保証のサブリースは家賃が保証されていることは同じですが、マンションの経営や管理を誰がするのかという点が違います。
- マンション経営を投資家が行うのが空室保証サービス
- マンション経営毎、任せてしまうのが家賃保証のサブリース
管理とはどのような仕事なのか詳しく知りたい方は区分マンション投資における管理とはで解説しています。
マンション経営で家賃保証(サブリース)のメリット
サブリース契約には3つのメリットがあります。
- マンション経営が楽になる
- 空室を気にしなくて良い
- 確定申告が楽になる
マンション経営が楽になる
マンションの経営では、やらなければいけない雑務が非常に多いですが、その雑務をサブリース会社が全て引き受けてくれます。
- 家賃の滞納の取り立て
- 入居者同士のクレーム対応
- 入居者の募集
- 諸手続きの代行
雑務は手間や時間がかかるので、不動産投資でストレスになりやすいです。しかしサブリース契約を結ぶことで、ストレスから解放されて毎月家賃収入を得られることは魅力的ですよね。
空室を気にしなくて良い
サブリース契約の場合、マンションをサブリース会社が借りることになるので、空室かどうかに関わらずサブリース会社から毎月賃料を得ることが出来ます。空室にならないためにはどうしたら良いかを考えて四苦八苦する投資家が多い中で、空室を気にせずマンションを保有することができます。マンション投資の初心者にとって安心できる魅力的な制度に思えます。
確定申告が楽になる
投資家がマンション経営を行う場合は、部屋ごとの収益や経費などを自分で計算する必要があります。しかしサブリース契約の場合は、収入がサブリース会社からの賃料収入のみなので、会計の知識がない方でも簡単に確定申告することができます。会計士や税理士の費用も安くはないので、出来る限り自分で確定申告をして費用を抑えたいですよね。
- マンション経営が楽になる
- 空室を気にしなくて良い
- 確定申告が楽になる
マンション経営で家賃保証(サブリース)のデメリット
サブリース契約はメリットが多いですが、デメリットが2つあります。
- 高い収益が見込めない
- マンションの修繕費は投資家負担
高い収益を見込めない
サブリース契約はサブリース会社がリスクを取る分、得られる賃料が少ないことがデメリットです。
- 家賃収入が高くても満室時の8割程度しかもらえない
- サブリースの対象物件は割高な新築が多く、元々の利回りが低い
- 敷金・礼金・更新料がもらえない
マンション投資でお金を増やしたいのに、サブリース契約を結ぶと儲かりづらくなってしまうことは大きなデメリットです。
マンションの修繕費は投資家負担
サブリース契約でマンションの経営を委託できますが、マンションの修繕費は原則投資家負担になります。
- エアコンやトイレ、キッチンなどの経年劣化による修繕・修理
- 給湯器の交換など
マンションを経営すると10年毎に数十万円~数百万の修繕費が必要になります。
サブリース契約を結ぶと収益性が低くなるうえに修繕費は従来通りかかるので、通常のマンション投資と比較すると、経営は安定しますが稼ぎにくい契約と言えます。
- 高い収益が見込めない
- マンションの修繕費は投資家負担
家賃保証(サブリース)はマンション投資初心者にはおすすめできない
サブリース契約は面倒なことを全てやってくれますし、空室も気にしなくて良いし、マンション投資初心者向けのサービスに思えるのですが実態は違います。
- 初心者だと不利な契約に気付きにくい
- サブリース会社が契約を取るために不都合なことを伝えない
「サブリースは管理が簡単なので、マンション投資家の初心者におすすめです」という宣伝文句がありますが、これは大きな間違いです。なぜなら、マンション投資家の初心者は、周辺の家賃相場や物件相場、計画書の良し悪しなどがわからないため、不動産業者の口車に乗せられるケースが多いためです。
実際に、マンション投資家の初心者がサブリース契約を結んでしまい、大損したというトラブルが後を立ちません。実際にあったトラブルの事例と契約の落とし穴について紹介します。
サブリースのトラブルの事例
実際にサブリースで投資家が損をしたトラブルの事例を紹介します。
- 事業計画書の中にマンションの修繕費の記載がなく、想定した利益を大きく下回った
- サブリース会社から勧められて割高なマンションを買わされた
- サブリース契約で入ってくる家賃収入が周辺の家賃相場よりも大幅に低い
- サブリース会社が倒産してしまい、投資家に大きな借金が残った
上記のトラブルはいずれも投資家が大きな損を被りました。サブリース会社が意図的に情報を隠すと、マンション投資家の初心者では正しく判断することが難しくなってしまいます。
契約の落とし穴
契約の中にも多くの落とし穴が潜んでいるので、不動産の契約時は契約書をしっかり読みましょう。
- 30年間家賃保証と宣伝しながら、2年ごとに契約の見直しで家賃を下げられる
- 物件の売却が好きな時に出来ない
- 免責事項で契約から半年間は家賃の支払いがないこともある
サブリース契約は一般的に投資家に不利になる契約が多いです。そのため「話が違う!」というトラブルが後を絶ちません。家賃を大幅に減額させられたりすることも珍しくないので、契約書には最新の注意を払わなければいけません。
実際に起こった家賃保証の大きなトラブル
メディアでも放送された有名な家賃保証のトラブルを2つ紹介します。
- かぼちゃの馬車の経営破綻
- レオパレスのサブリース問題
いずれもサブリース契約により悪質なトラブルが発生し、新聞やテレビなどで大々的に報じられていました。
かぼちゃの馬車の経営破綻
かぼちゃの馬車はスマートデイズが運営していたサブリース契約を利用した女性専用のシェアハウスです。かぼちゃの馬車のサブリース契約は「頭金なしで、家賃収入30年間保証」という内容で、投資家は「何もしなくても30年間家賃収入が得られる」ことを期待していました。
しかし入居者が想定より遥かに下回り、マンション投資家に対して家賃を支払うことができなくなったため、スマートデイズが経営破綻しました。
以下日本経済新聞電子版より引用です。
「女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ(東京・中央)は9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理されたと発表した。入居者を集められず、所有者への賃料の支払いが止まるなど運営に行き詰まった。同社によると3月末時点の負債総額は約60億円に達する。
スマートデイズは投資目的の所有者が建設したシェアハウスを一括で借り上げたうえで女子学生らに転貸する「サブリース」と呼ばれる業者。1軒あたり1億円超とされる建設と不動産の取得費用のほぼすべてをスルガ銀が融資していた。所有者の大半は副収入を得たい30~50歳代の会社員で、スマート社からの賃料収入をスルガ銀への返済の原資にしていた。
ただスマート社は入居者を十分確保できず、今年1月から所有者への賃借料の支払いが止まった。所有者はスルガ銀への返済に窮しており、被害者の相談に応じている弁護士によると自己破産を申請した所有者も出ているという。
家賃保証している会社の経営が行き詰まり経営破綻してしまったため、投資家は高値で購入した不動産と借金だけが残ってしまいました。マンション投資の初心者を狙った悪質なトラブル事例です。
レオパレスの家賃保証問題
レオパレスのサブリース問題は家賃保証30年間といいながら、数年たつと保証している家賃を大幅に引き下げていました。
以下 テレビ東京のメディアから引用です。
「2017年12月、ガイアはスクープ第1弾として、レオパレスのサブリースをめぐる契約トラブルの実態を放送。「30年間の賃料保証」などのうたい文句で、賃貸アパートの個人オーナーや相続税対策を考えている人などとサブリース契約を交わしていたが、途中で反故に。「契約から10年超のアパートは契約を解除」「10年未満は家賃収入の大幅な減額を求める」という内容だ。
つまり「30年保証と言ったけれど10年に短くする」「払うと約束したが、やはり払えない」という、個人オーナーたちとしては受け入れらない内容だった。この一方的な契約変更は「終了プロジェクト」という名称で組織的に行なわれていたことが明らかになった。」
中には家賃保証を100万円以上減額するというケースもあり、悪質なトラブルでした。このように東証一部に上場している大企業でもサブリースはトラブルとなっていたのです。そのため、マンション投資の初心者にはサブリースはおすすめ出来ないのです。
悪質なトラブルは家賃保証以外にも数多くあります。詳しくはマンション投資で詐欺に遭わないために!手口を知って対策しようで解説してます。
自分で考えられる人なら家賃保証は有効な経営手段の一つ
悪いイメージが先行しているサブリースですが、一概に悪いことばかりではありません。マンション投資に精通している人であれば、有効な経営手段の一つとなります。
マンション投資を経験していて
- 家賃相場にある程度精通している
- 自分自身でマンション経営できるけれども、一部を外注したい
- 事業計画書、キャッシュフローなどを自分で作成できる
- 契約書を細部まで見ることが出来る
という方であれば、サブリース契約はマンション投資家の負担を下げる有効な手段となります。もし家賃保証契約を結んだマンションの家賃が引き下げられたり、半強制的に解約になっても自分でマンションを経営できる能力があればリスクは下がります。自分でマンション経営をできる能力があり、一部を外部に委託したいという方であれば、家賃保証契約は検討できる契約かもしれません。