この記事では法人で不動産投資をする人にとって、資本金はいくら必要なのかについて解説しています。
法人の場合、資本金が1円からでも可能
株式会社・合同会社いずれも資本金は1円から設立可能です。しかしながら、中古マンション投資を行うならば、資本金を1円にしてはいけません。なぜなら、資本金が低いと会社の運営に支障が出るからです。
- 会社の運転資金の充実
- 対外的な信用度
- 会社の健全性の向上
資本金の役割は会社の運転資金だけでなく、対外的な信用度にも関わります。そのため、適正な資本金を用意しておくことは重要なのです。
次に、中古マンション投資を行う上で、資本金はいくら必要なのか具体的に解説します。
資本金は100万円以上1,000万円未満が適切
中古マンション投資において、資本金は100万円以上1,000万円未満の範囲内で用意しましょう。
- 資本金が100万円未満だと資金調達の面で不利になりやすい
- 資本金が1,000万円以上だと税制面で不利になる
資本金は100万円から900万円の範囲内であれば金額についてそこまで気にする必要はありません。
しかし、資本金は多い方が銀行からの融資を受けやすいため、可能な限り多く積んでおくと良いです。
資本金が100万円未満だと融資されにくい
資本金は法人の信用に結びつきます。資本金が100万円未満で額だと信用が弱まり、銀行から融資を受けにくい状況となります。中古マンション投資は金額が大きいため、銀行からの融資なしで運営するのは極めて難しいです。
また銀行によっては一定の資本金以上なければ利用できない融資制度があります。代表的な例として挙げられるのが日本政策金融公庫の新創業融資制度です。融資の条件に「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」という文言があるため、資本金が少ない場合は融資を受けることができません。
(参照:日本政策金融公庫 新創業融資制度)
そのため、3,000万円の中古マンションに投資をしようと考えた場合、10分の1にあたる300万円以上の資本金を準備する必要があります。日本政策金融公庫の制度資金を代表例として挙げましたが、民間の金融機関でも同じように資本金の金額を重要視しています。
そのため、資本金は少なくても100万円以上、なるべくなら購入する中古マンションの価格の1/10前後を用意しておきましょう。
資本金が1,000万円を超えると消費税の課税対象法人
資本金は1,000万円を超えると消費税の課税対象法人になります。そのため、消費税の課税対象となる取引がある場合は資本金を1,000万円未満に抑える必要があります。資本金が1,000万円未満の場合、消費税の免税事業者となり、消費税を受け取っても支払わなくても良いという制度があります。免税事業者の方が利益の増加を見込めるので、資本金を1,000万円未満に抑えた方が良いでしょう。
中古マンション投資で消費税の課税売上になるものと、ならないものは下記の通りです。
- 入居者負担のリフォーム代
- 建物の売買代金
- 事業用の中古マンションの賃料
- 駐車場のみの賃料
- 住宅用の賃料や共益費、礼金
- 土地の売買代金
主となる収益である家賃収入が非課税ですので、中古マンション投資の場合は消費税免税によるメリットは大きくはありません。しかしながら、駐車場のみを賃貸する場合や事業用の中古マンションを賃貸する場合などは消費税の課税対象となります。消費税の課税対象となる取引をする中古マンション投資家の方は資本金を1,000万円未満に抑えましょう。
資本金が1,000万円を超えると法人税の維持費が高額に
資本金を1,000万円超える場合、法人の維持費が高くなります。法人には利益の水準に関わらず、従業員の数と資本金の金額に応じて課税される法人均等割があります。
- 資本金1,000万円未満・・7万円
- 資本金1,000万円以上~1億円未満・・13万円
- 資本金1億円以上・・16万円
- 資本金10億円以上・・41万円
資本金が1,000万円以上になると法人の維持費が7万円から13万円に高くなります。法人均等割は毎年課税され会社の負担になるため、最低限に抑えておいた方が良いでしょう。
相続税対策の資本金
相続税対策で中古マンションを購入する場合は100万円以上1億円未満で資本金を積み立てると良いでしょう。中古マンションの相続は金額が大きくなるため、1,000万円以下では資金不足になる可能性が高いです。1,000万円で対応できる場合は対応し、難しい場合は1億円を超えない範囲で資本金を積み立てましょう。
資本金を1億円以下で抑える理由は中小企業の優遇特典が受けられなくなるためです。中小企業の優遇特典には様々な税制上のメリットがあります。
- 法人税率の軽減
- 欠損金の繰越・繰戻の全額控除
- 機械等の特別控除
- 交際費の控除限度額の優遇
(参照:国税庁 措置法上の中小法人及び中小企業者)
税制上のみならず、補助金や助成金を申請する際にも資本金が1億円以下であることを要件としているケースもあります。そのため、資本金を1億円以上にすると、これらのメリットがなくなるため、会社を運営していく上で勿体ないです。
資本金を積み立てる際の注意点
資本金を積み立てる際は2つ注意点があります。
- 知人・親族からの借り入れは評価が低い
- 株数が少なすぎると増資がしにくい
資本金の出処は重要!知人・親族からの借り入れは評価が低い
資本金の数字を良く見せるために一時的に親族や知人からお金を借りて、会社の資本金として積み立てる人がいますが、銀行融資でネガティブな評価を受けるケースがあります。
銀行が融資の際に重要視していることは、どのように自己資金を貯めてきたのかという点ですので、資本金の出所を聞かれるケースが多いです。毎月の貯蓄によって貯金残高を増やしてきた人が評価され、親族や知人からの借り入れによる預金残高の急増については評価されません。
他者からの借り入れに依存せず、自分自身で資本金をしっかり積み立てておきましょう。
株数は少ないと増資がしにくい
株数は少なすぎると増資がしにくくなるため、適正な株数で資本金を積み立てましょう。株数が少ない場合、1株単位でしか増資できないため、資本金を増やしたいと考えた時に不便になります。
例えば1株を100万円にした場合、100万円単位でしか増資できません。そのため、10万円や50万円などの単位で増資することができなくなり、増資するときは不便になります。1株5万円や10万円など1株の価格を適正な価格にして、増資しやすくするように設定しましょう。
資本金はいくら必要?
必要な資本金は置かれている状況により変わります。
- 法人は1円で設立可能ですが、融資を受けたければ100万円以上で、出来れば希望融資額の1/10
- 資本金が1,000万円を超えると、税金が高くなり、消費税を払う義務が発生する
- 資本金が1億円を超えると中小企業の優遇特典を受けられなくなる
- 知人や親族から借り入れて資本金にしても、銀行からの評価を得られない
初めての融資は日本政策金融公庫を活用することで、融資の審査が通りやすく、経営のサポートもしてくれます。万が一返済が困難になっても、返済計画の変更も柔軟に受けてくれます。詳細は下記の記事で解説しています。