不動産オーナーが知っておきたい火災保険の基礎知識

「火災保険なんてただのお守り、お金がもったいないよ!』「火災なんて滅多にないんだから、そのお金をもっと有意義に使った方が良い!」そんな意見をよく耳にします。無理もありません。私たちは火災にあったマンションを殆ど見たことがないんですから。

不動産オーナーにとって不動産投資の目的は収益を上げることです。そんなオーナーにとって最も恐ろしいもののひとつが不動産の火災や地震ではないでしょうか。しかし、火災保険に加入する理由はそれだけではありません。では火災保険とはどんなものなのか、以下に順を追って解説していきます。

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  不動産オーナーが知っておきたい火災保険の基礎知識

火災保険とは、火災の他にも落雷・破裂・爆発・風災・雪災・盗難などによる建物や家財への損害とそれに付随する復旧費用に対し保険金が支払われる保険のことです。火災保険の保険料は不動産投資事業に関係するものですから経費に計上できます。

 ひとくちに火災保険と言っても、不動産オーナーが加入する火災保険は賃借人やマイホーム所有者のように家財等への補償は絶対ではありませんが、災害で空室が続いた時の家賃や、人の死が関わる事由の解決費用の補償については導入の余地がありそうです。

 火災保険に加入していると

もしも不動産オーナーが火災保険に入っていない状態で災害に遭ってしまったら・・壊れた建物とローンの返済だけが残って不動産投資事業はたちまち立ち行かなくなり、最悪の場合に自己破産というリスクを伴います。しかし火災保険に入ってさえいれば、不動産の再調達や家賃の補償や付随する費用などを得られ、事業の立て直しが可能になるのです。

柴田編集者
前述のとおり、火災保険と言っても火災以外の自然災害(床上浸水や飛来物や豪雪)・盗難・車輛追突・ガス爆発・水道管破裂なども補償される場合が殆どですので、何か被害があればまずは保険会社に求償できるか相談することが大切です。

災害時に支払われる保険金額

では、災害時に支払われる保険金額はどのようにして決めるのでしょうか。

対象物件と同じものを再建・再取得するのに必要な費用相当額をもとにする「再調達価額」と損害が生じた時点の価値「時価額」をもとにする2つの方法があり、後者の方が保険料は安くなります。

また、火災保険は対象不動産の構造・建築年数・建物の所在・保険期間などで割引されます。保険とは保険料の金額と保険適用リスクのバランスを全加入者が公平になるように調整すべきものだからです。

オーナーが知っておくべき重要な特約

 火災保険でオーナーが知っておくべき重要な特約には以下のようなものがあります。

施設賠償責任特約

事業用の施設や建物の欠陥・不備で他人に与えた損害への金銭賠償

 例:マンションの壁面タイルが剥がれ落ち階下の住民に当たった場合など

家賃収入特約

事業用の施設や建物が被災し被った家賃収入の損失への金銭補償

 例:災害の復旧工事が完了するまで入居できなかった空室の家賃など

家主費用特約

特定事由事故の発生で被った家賃収入の損失、原状回復費用、遺品整理等費用への金銭補償。この場合の特定事由事故とは、自殺・犯罪死・孤独死などを指します。

 例:入居者が自殺しその遺品整理費用や事故物件として減額した家賃の損失分など

更に火災保険と併せて知っておくべきこととして「被災者生活再建支援」という被災物件に対する行政の支援制度があります。これは個人の住宅が被災した場合の制度で投資用不動産は対象外ですが、オーナー個人宅が制度の要件に合致すれば個人宅部分についてのみ申請できるということも併せて覚えておきましょう。

  地震保険に入る必要性はあるのか?        

不動産を目的とする保険には火災保険と地震保険があり、火災保険加入者だけが地震保険に追加で加入できます。地震保険単体での加入はできません。地震保険は地震・噴火またはそれらから起こる津波を原因とする損害に対して支払われますので、地震による火災は地震保険から支払われます。

柴田編集者
注意が必要なのは、地震による建物の損害や火災に対しては火災保険のみ加入の場合だと補償されません。

事務員
火災が起これば必ず火災保険で補償されるというわけではないのですね!

 

この地震保険の保険金額には制限があり、基本になる火災保険の保険金額の30%~50%かつ1戸当たり5,000万円までの範囲とされます。複数世帯が居住する賃貸の共同住宅(マンション・アパート)の限度額は5,000万円ではなく、「世帯数 × 5,000万円」 を上限とすることができます。ちなみに地震保険の保険期間は最長で5年、5年毎の更新契約が割引率も高く一般的です。

損保ジャパンの実績では、2014年に起きた東北の地震以降10年も経たないうちに保険料を3回改定し14%も値上がりしました。今後も地震をはじめ台風・豪雨・豪雪などの自然災害に対する保険会社の感度は上がる一方だと言えます。

 

引用:損保ジャパン

 

また今後数十年の間にマグニチュードM7以上の地震が起こる確率は・・等とメディアが報じることが多くなりました。つまり、地震保険を使う確率も日に日に高まりつつあるです。

引用:中小企業庁

もし入居者が火災保険を更新していなかったらどうなるのか?

賃貸マンションの入居者が加入する火災保険の補償内容は、建物専有部分の損害だけではなく自分の家財道具の損害、更に近隣への損害のお見舞金など幅広く補償されるのが特徴です。上の階からの漏水被害や、強盗・空き巣などの盗難被害も補償に含まれます。

柴田編集者
特約としてよく見かける「個人賠償責任保険」とは、第三者のモノを壊したり、第三者にケガを負わせたりした場合を補償する保険のことです。

事務員
どういったものが対象になるのでしょうか?

柴田編集者
故意や重過失によって起こしたものは適用されませんが、うっかりミスでの場合は補償対象に含まれます。

入居者が火災保険に加入することを不動産オーナー側から強制は出来ませんが、もしも火災保険に加入していない状態で入居者の部屋から火災が起こった場合を考えてみましょう。

入居者は、近隣入居者への賠償・不動産オーナーへの賠償・自分の家財の復旧などの全てを自分の資力だけで補償しなければなりません。しかしこれは実質的に不可能です。

入居者の火災保険はオーナーとその建物の為に加入するというよりは、それらの被害を補償するための「多額の金銭を用立てする手段」という意味合いの方が強いです。つまり万一の時でも親族間を走り回ってお金の工面をしたり、長年の賠償債務を背負ったりすることが無いように、入居者自身の安心のために加入するものだと理解してもらいましょう。

火災保険を選ぶ際に確認しておきたい3つのポイント

火災保険についてたくさん述べましたので難しいと感じる方も多いかもしれません。しかし、重要なポイントはそんなに多くありません。ここからは重要なポイントを大きく3つに分けて解説します。

補償期間

火災保険の契約期間は最長10年で、更新も可能です。不動産投資事業は長いスパンで取り組むことが多く保険期間は長期であるほど大きな割引が見込めるので、単年のキャッシュフローを大きく損ねる可能性や、不動産投資事業を短期で切り上げる計画などの理由が特になければ10年契約、満了後にまた更新で良いでしょう。

補償範囲

施設賠償責任特約・家賃収入特約・家主費用特約などはメインの火災保険に付随する二次的な補償です。築年数が古く施設が老朽化している、低位の土地に建っていて近くに河川がある、地震や突風の発生事例が多い地域にある、などの要因を考慮して保障の範囲を決めましょう。

ちなみに火災保険の免責額を上げて保険料を低く抑え、そこで出た差額を特約に充てるなど工夫次第では収益を悪化させない方法もあります。

補償対象

不動産オーナーが加入する保険でしたら、建物のみもしくは建物+家財のどちらかです。特にめぼしい家財がなければ建物のみを対象とすれば良いでしょう。

 

一番危険なことは、どうせ使うことはないからと保険料の安さだけを根拠に保障内容を決めてしまうことです。保険料が安ければ少しは節約にはなります。しかし、万一の不動産事業継続の危機に全く効果のない保険であれば何の意味もなく、それこそ本当の無駄遣いになってしまいます。自分にとって必要な保障は何か、よく考えて加入するようにしましょう。

火災保険は比較して加入しよう

保険会社によって補償内容や保険料にいろいろな種類があるので、物件の状況と運営スタンスをもとに広く比較検討することが大切です。加えて保険会社や代理店選びもその後の保険の使用感を上げてくれる重要な要素です。親身で速やかな対応をしてくれる会社を窓口に選びましましょう。

さらに、物件を管理する不動産会社の担当者に、融資残高や大規模修繕計画、出口戦略(売却)などを踏まえて改善提案をしてくれる不動産投資の事業運営に詳しい人がいれば、なお安心です。

 

災害時は不動産投資事業の中でも最もお金が動く瞬間です。絶対にあってはならないですが、万一そんな時でも資金調達方法さえ確保してあれば、後は安心して事業に専念できるでしょう。

日々いろいろな決断を強いられる不動産オーナーにとって、この機会が最も懸命な決断の一助になれば幸いです。

 

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