2016年2月16日にマイナス金利が導入されてから、早5年以上の月日が経ちました。しかし、マイナス金利の導入の目的であった景気の底上げと物価の上昇の目標は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、未達成のままです。
そんな、マイナス金利は日本経済に様々な影響を及ぼしています。不動産投資も例外ではありません。当記事ではマイナス金利が不動産投資にあたえる影響について解説します。
マイナス金利政策とは?
マイナス金利とは、読んで字のごとく、金利がマイナスになっている状態です。通常はお金を預けると金利がついて返ってきます。しかし、マイナス金利の状態はお金を預けるとお金が減った状態で返ってくるということです。
その目的や狙いについて、詳しく見ていきましょう。
マイナス金利が導入されたのはなぜ?その目的や狙いは?
マイナス金利政策が導入された背景には、バブル崩壊以降続く景気低迷の長期化がありました。
マイナス金利になると、民間銀行は日本銀行にお金を預けているとお金が減ってしまうため、企業や個人にお金を貸して金利を得た方が得だと考えるようになります。
その結果、銀行が個人や企業に融資する際の金利も下がり、企業の設備投資や個人の消費が活発になり、景気を回復させるという狙いがありました。日本は長らく物価が下落するデフレ状態が続いていましたが、マイナス金利政策が成功した場合、経済が活性化し、賃金や物価が上昇するインフレ状態になると期待されていたのです。
マイナス金利はいつまで続くのか?
先述の通り、マイナス金利政策が成功した場合、景気がよくなり、物価が上昇すると考えられています。日銀は物価上昇率2%の目標を設定していますが、現実的に2%の物価上昇は厳しい目標と言わざるを得ません。日本の物価上昇率を見ていきましょう。
引用:世界経済のネタ帳
上記のグラフをみていただくと、物価上昇率2%の目標は現状とかけ離れていることがわかります。直近で物価上昇率が2%を上回っているのは2014年ですが、2014年は消費税が5%から8%に引き上げられた年です。物価の算定には消費税も反映しているため、2014年の物価上昇は景気拡大による物価上昇ではなく、消費税増税による影響といえるでしょう。この消費税増税による物価上昇は日銀が目指している姿ではありません。
その前に物価上昇率が2%を上回っている年は1991年で、その頃はまだバブル経済期にあり、株式や不動産が過度に高騰していた時期です。経済成長率が低迷している現在の日本経済がバブル経済期のような勢いがないことは言うまでもなく、実際にバブル経済終焉以降は消費増税の年以外で、物価上昇率が2%を超えたことは一度もありません。
マイナス金利政策は不動産投資にどのような影響があるのか?
マイナス金利政策は不動産投資にどのような影響を与えるのでしょうか。その影響を考えてみましょう。
不動産投資家にとって、マイナス金利政策の一番のメリットは金利が低く抑えられるという点です。金利が低いということは、融資を受けて不動産に投資をする場合の金利負担(コスト)が減ることを意味しているからです。
不動産から得られる収益が5%であっても金利負担が4%であれば収益は1%になってしまいます。
しかし、金利負担が1%であれば、得られる収益は差し引き4%。同じ収益でも支払い金利によって得られる収益は大きく異なることがわかります。
また、マイナス金利政策期間中、金融機関は日銀の当座預金に預けるとマイナス金利によりコストを支払うことになるため、融資にも積極的になります。
金融庁が行ったアンケートによるとマイナス金利を導入した2016年以降不動産投資向けの融資残高は拡大しています。銀行や信用金庫などの金融機関がマイナス金利導入以降積極的に不動産投資関連の融資を行い、残高を増やしていることがわかります。
マイナス金利の今は不動産投資をするのに良いタイミングなのか?
マイナス金利は不動産投資家にとって有利な情勢です。不動産を担保にとりお金を貸す不動産投資関連の融資は安全性が高く、金融機関も積極的に貸し出しを行う傾向にあるため、お金を借りやすくなるためです。
金利と公示価格にどのような関係がかるのかを見てみましょう。
公示価格とは国土交通大臣が1月1日時点の基準地点の価格を示すもので、公示価格の推移によって土地が値上がりしているか否かを測ることができます。
地価変動率の推移のグラフをご覧いただくと、マイナス金利が導入された平成28年(2016年)以降、公示価格が徐々に上昇していることがわかります。
不動産投資はあくまでも投資です。エリアのニーズや周辺の相場を見極めて、需要が旺盛で価格が下がりにくい不動産をできるだけ安値で手に入れることが不動産投資の肝なのです。
まとめ
不動産投資家にとってマイナス金利政策は追い風と言えるでしょう。ただし、有利であるからといって焦って不動産投資を始める必要はありません。
不動産投資を成功させるためには良い物件との出会いが欠かせません。良い物件は売りに出たらすぐに売れてしまいます。売りに出ているのを見てから検討するのではなく、良い物件に出会えたらすぐに買えるように、購入したい不動産の条件を明確に持っておくなど、購入するまでの準備が非常に大切です。
良い物件が出たらすぐに購入できるようにセミナーに参加したり、融資を希望する場合は、どれくらいの金額を借りることができるのか調べたりしておくことも重要です。不動産投資はタイミングが非常に重要ですので、タイミングを逃さないための事前の準備をマイナス金利が続いているうちに始めてみてはいかがでしょうか?