REITとは多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの不動産へ投資を行い、そこから得られる賃貸収入や売買益を原資として投資家に配当する商品で、不動産投資信託とも呼ばれています。REITには大きく分けてJ-REITと海外REITに分類されます。
この記事では不動産投資を始める前にまずは少額の投資(REIT)から始めたいと考えている人に向けて、J-REITと海外REITの違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
不動産投資にはないREITのメリット・デメリットとは?
・分散投資が容易
・流動性が高い
・維持管理の手間がかからない
1つ目に少額で投資できる点が挙げられます。通常、不動産投資はフルローンでない限りは多額の初期投資が必要になります。しかし、REITの場合は数万円程度の少額から売買が可能です。少額の手元資金で投資を始めることができるので、個人の投資家でも手軽に始めることができるでしょう。
2つ目に分散投資が容易である点が挙げられます。投資の格言に「卵は一つのカゴに盛るな」があります。これは特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教えです。
REITは多くの投資家から幅広く集めた資金を、商業施設やホテル、オフィスなど複数の不動産など複数の不動産に分散して投資しているため、REITを買うだけで用意に分散投資が可能です。
取得単価が低い上に、一つのREIT商品の中にも複数の不動産が組み込まれているので、実物の不動産に投資する場合と比較して、分散投資がしやすく、リスクの軽減につながります。
3つ目に流動性が高い点が挙げられます。REITは証券取引所に上場されているので、上場株式と同様に証券市場で売買が可能です。したがって、流動性が高く、急に現金が必要になってもすぐに換金できます。
4つ目に維持管理の手間がかからない点が挙げられます。REITは不動産投資の経験豊富なプロが運用するので、不動産投資の知識やスキルがない初心者でも利益を上げることができます。不動産投資のように物件の維持やテナントの管理の手間や、それに伴う経費などが発生しません。
・融資を利用できない
・上場廃止や倒産リスクがある
1つ目に値動きが激しく元本割れのリスクもある点が挙げられます。REITは証券取引所に上場されているので、上場株式と同様に元本割れのリスクがあります。実物の不動産投資の場合は賃貸市場、金利環境、経済情勢などの影響を受けて、賃料収入が減少するリスクがありますが、毎日家賃が変わるということはあり得ないため、毎日その価格が変わるという点はREITならではのデメリットと言えます。
2つ目に融資を利用できない点が挙げられます。実際の不動産投資の場合には銀行の住宅ローンを利用して、融資を受けることが一般的ですが、REITの場合は住宅ローンを利用できず、全額自己資金で投資する必要があります。
3つ目に上場廃止や倒産リスクがある点が挙げられます。REITを運営している不動産投資法人が証券取引所の上場基準に抵触し、上場廃止になる可能性があります。また、上場廃止にならなくても倒産する可能性があります。その場合は資金が満額返却されないことがあります。
J-REITと海外REITとではどのような違いがあるのか?
REITは手軽に不動産投資を始めることのできる投資手法ですが、REITにはJ-REITと海外REITがあります。
J-REITはJapan-REITの略称であり、日本国内で運用される日本のREITです。日本以外のREIT、つまりJ-REIT以外のREITを海外REITと総称しています。しかし、実際には海外REITにも様々な国と地域のREITが存在し、例えば、世界最大規模を誇る「米国REIT」や「欧州REIT」「アジアREIT」などがあります。
- | J-REIT | 海外REIT |
名称 | Japan-REIT | 海外REIT |
投資先 | 日本国内の不動産 | 海外の不動産 |
J-REITとは?メリット・デメリットを解説
日本国内の不動産を投資対象とするJ-REITですが、日本の個人投資家には大きなメリットがある一方で、J-REITならではのデメリットも存在します。それぞれを総合的に判断して投資の可否を判断しましょう。
一般的なJ-REITのメリットは以下の通りです。
・上場廃止が少ない
・情報が手に入りやすい
一般的なJ-REITのデメリットは以下の通りです。
・災害リスクがある
J-REITに投資するメリットとは?
1つ目のメリットとして、多くの証券会社で取り扱いがあることが挙げられます。
現在、日本には60本以上のJ-REITがあると言われていますが、REITを扱っている日本の証券会社であれば、ほとんどの銘柄を買うことができます。したがって、多くの商品ラインナップから自分の求めるリターンやリスク許容度に合致した商品を見つけることができるでしょう。
2つ目のメリットには、上場廃止が少ないことが挙げられます。
株式や国債と比べるとREITの歴史は浅く、販売開始から20年程度しか経過していません。しかし、REITは不動産投資のプロが運用していることから安定的なリターンを出しており、これまでに上場廃止となったREITはプロスペクト・リート投資法人のみです。
3つ目のメリットは、情報が手に入りやすいことです。
海外REITの場合は、英語等でしか情報が出回らない場合も少なくありませんが、J-REITの場合は、投資対象が日本国内の不動産ですので、日本の不動産市場の景況感を肌で感じることができて、取引の判断材料として活かすことができます。REITを運用している会社によるセミナーなども多数開催されており、投資対象となる不動産に関する情報が手に入りやすい状況にあることも大きなメリットなのです。
J-REITに投資するデメリットとは?
1つ目のデメリットとして、高利回りは期待できないことが挙げられます。海外REITでは10%を超える利回りのものもありますが、J-REITの利回りは4%程度が平均となっています。さらにアセットマネジメント会社などへの手数料を差し引くと利益は少なくなります。大きなリターンを求める場合には物足りなさを感じるかもしれません。
2つ目のデメリットとして、災害リスクが高いことが挙げられます。投資対象の不動産が自然災害の影響を受けると、REITの価格や分配金が変動する可能性があります。J-REITの場合は、投資対象が日本国内の不動産ですので、日本特有の地震や水害などのリスクが高いことを考慮する必要があります。
海外でREITとは?メリット・デメリットを解説
日本以外の海外の不動産を投資対象とするのが海外REITです。J-REITとはまた違う海外REITならではのメリットやデメリットがあります。それぞれを総合的に判断して投資の可否を判断しましょう。一般的なJ-REITのメリットは以下の通りです。
・利回りが高い
一般的なJ-REITのデメリットは以下の通りです。
・変動が激しい
海外-REITに投資するメリットとは?
1つ目のメリットとして、分散投資効果が高いことが挙げられます。海外REITは日本国外の不動産以外を投資対象とするので、リスクを全世界に分散できます。「卵は一つのカゴに盛るな」という観点では最高の選択と言えます。また、世界のREIT市場の6割を占める米国のREIT海外ではホテルやオフィス、商業施設などの大型物件以外にもヘルスケア・インフラ・データセンター・農地・刑務所に投資するREITがあるなど多様性に富んでいます。
2つ目のメリットは利回りが高さです。日本と比較すると海外REITは法規制が少なく、J-REITよりも高利回りの商品が数多くあります。J-REITの平均利回り4%に対して、海外REITでは10%以上の利回りが見込める商品もあり、高いリターンを狙いたい投資家にとっては良い投資先と言えるでしょう。
海外-REITに投資するデメリットとは?
1つ目のデメリットは購入のハードルが高さです。日本の証券会社ではJ-REITのラインナップは豊富ですが、海外REITの場合は購入できる商品が限られています。また、その管理費用が高いこともネックとなります。
2つ目のデメリットとして、変動が激しいことが挙げられます。J-REITは安定的な利回りを追求することが多い一方で海外REITは高い利回りを追求するためにハイリスクハイリターンの投資になりがちです。実際に新型コロナウイルスの影響があった2020年3月からの3ヶ月間で、米国REITはすべて下落しています。
海外REITに投資するならETFがお勧め
ETFとはExchange Traded Fundの略称であり、日本では上場投資信託と呼ばれています。ETFとは個別株ではなく、日本の日経平均株価やTOPIX、米国のダウ平均株価やS&P500など指数に連動するように運用されており、中身は複数の銘柄で構成されています。
REITには様々な種類がありますので、どれを選べばいいのか分からないという方もいると思います。その場合に指数に連動するREITを購入すれば、個別のREITに投資するよりも手軽でかつ手数料が安く、リスクを抑制した投資が行えます。
少額からREIT投資を始めよう
不動産投資に興味があっても資金面から難しい方であってもREITであれば、少ない資金で気軽に始めることができます。一方でREITには特有のリスクもあるので、メリットとリスクの両方を理解した上で投資することが重要です。
リスク分散の観点では、J-REITのみではなく、海外REITやETFも組み合わせて購入するのがお勧めです。この記事でご紹介したREITの基礎知識を基に、どのようなREITへの投資がご自分に合っていそうなのか判断し、少額からREIT投資を始めてみてください。