NISAやiDeCoでも運用可能なREIT。皆様の中でもその名前を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか?
しかし、株式や債券で運用する投資信託はわかりやすくても、REITはよくわからないと感じていらっしゃる方も多いようです。REITは投資信託の中でも、株式や債券ベースの投資信託と比べると、さまざまな違いや利点、そしてリスクがある少し特殊な存在です。そこで、REITにはどのようなメリットとデメリットがあるのかを詳しく解説しましょう。
REITとは?
REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略で、投資家からの資金で不動産投資を行い、その利益を投資家に分配する投資信託です。証券取引所に上場しているので、投資家は自由に売買できます。
REITを運用する投資法人は投資証券を発行し、投資家がその投資証券を市場で購入します。そこで集めた資金は別の運用会社が不動産購入にあてて運用し、その収益の一部が投資家に還元される仕組みです。投資対象は住居やビル、商業施設などさまざまです。
証券取引所に上場しているREITの数は、2021年6月時点で62銘柄あります。
他の投資信託とREITの違い
REIT | 投資信託(株式や債券など) | |
価格変動要因 | 対象不動産、地価、金利、売買需給 | 対象株式や債券、金利など |
前日比変動率 | 少ない | 大きい |
注文方式 | 成行、指値 | 成行のみ |
信用取引 | あり | なし |
銘柄ごとの利回りの違い | 少ない | 大きい |
REITは不動産投資信託であり、その点は株式や債券などで運用する投資信託と同じように思えます。しかしREITは運用対象が不動産であるということ以外にも、株式や債券などの投資信託と異なる点があります。
最大の違いは購入あるいは売却の注文を入れてから執行される(約定する)時間です。REITは株式のように「成行」や「指値」などで注文を出してリアルタイムで約定します。
一方で株式や債券などの投資信託の場合、その価格(基準価額と呼ぶ)はマーケットが終了した際の終値をもとに算出されます。
そのため、投資信託は15時までに受けた注文はその日のうちに基準価額が決まり、翌日マーケットが開いたタイミングで約定するという流れになります。
不動産投資とREITの違い
REIT | 不動産投資 | |
リスク | 低い | 高い |
運用対象 | 居住物件、ビル、商業施設、ホテルなど | 居住物件が中心 |
現物保有 | なし | あり |
購入金額 | 少ない | 大きい |
分散投資 | しやすい | しにくい |
流動性 | 高い | 低い |
所得区分 | 配当所得、譲渡所得 | 不動産所得、譲渡所得 |
不動産投資は直接不動産物件を購入し、賃借人をつけて家賃を得ます。一方でREITは投資証券を購入することで、その収益のみを分配金として得ることになります。あるいは売却にともなう譲渡益を得ることも可能です。
そのため、不動産投資は現物資産を保有できることに対して、REITは不動産を保有することはできません。そのかわりに不動産投資は頭金を用意しローンを組んで返済することに対して、REITは購入費用と委託報酬を支払う形になります。
不動産投資は不動産所得としてほかの所得と合算することに対して、REITはその譲渡所得と配当所得に直接税金が課せられます。不動産投資は場合によると税率が最大55%になりますが、REITは一律20.315%(所得税15.315%と住民税5%)の税率となります。つまり、不動産所得は給与所得や事業所得との損益通算が可能である一方、REITで損失が出た場合、損益通算できるのは、株式や他の投資信託から得た利益のみで、不動産のように給与や事業収入など他の所得と合算することはできないのです。
REITに投資するメリット・デメリット
REITはほかの投資信託や不動産投資と異なる点が多くあります。そこでREITに投資することでどのようなメリットとデメリットがあるのかをご紹介します。総合的に判断して始めるかどうかを検討するとよいでしょう。
REITに投資するメリットとは?
REITのメリットはまず、1口数万円から購入できることです。不動産投資のように頭金も毎月のローン返済の必要もありません。そしてREITは安定した配当が得られ、その平均利回りは3.37%(2021年6月21日時点)と高いのもメリットです。
(「不動産投信情報ポータル」より:http://www.japan-reit.com/sp/list/rimawari/)
また不動産投資のように物件選びや融資の申し込み、賃借人の募集と管理といった手間がかからない点も魅力と言えます。さらに不動産の現物と比べると流動性も高いので、好きなタイミングで現金化できます。
1口数万円から購入できるため、分散投資ができるのもREITのメリットと言えるでしょう。複数の物件に分散投資することで、空室リスクや物件価格の下落リスクを軽減できます。
そして株式や債券などの投資信託と同様に、REITはNISA口座でも運用が可能です。NISA口座を活用することで、年間購入金額が120万円までは、REITから得た利益に税金がかからなくなりますので、ぜひ検討してみてください。
REITに投資するデメリットとは?
REITに投資するデメリットとしては、まず価格変動リスクが挙げられます。REITの価格は運用している不動産の利回りや物件価格、さらに金利の変動により増減します。
また株式や債券などの投資信託とは異なり、投資家の需給によってもREITの価格は変動します。つまり多くの買い注文があれば価格は上昇し、売り注文が増えれば価格は下落するということです。この点は個別株と同じように価格が変動するので、時に損失となるリスクがあるのです。
上場廃止となる条件は、投資口の減少や純資産総額の減少、あるいは投資法人の破産など複数あります。
ほかにも運用している不動産における災害リスクがある点も、REITに投資するデメリットと言えるでしょう。地震による損害や倒壊、あるいは台風や豪雨による被害といったリスクを抱えます。商業施設やホテルなどは収益性が低下する可能性があり、REIT価格の低下や分配金の減少といったことにつながります。
REITを始めるべき人の特徴
ほかに不動産投資を検討している人であれば、分散投資ができることや運用における手間がかからない点でおすすめです。不動産投資は現物を保有できますが、物件探しやその管理に時間を取られてしまうため、忙しい人はまずREITから始めてみるのも良いでしょう。
REIT購入はネット証券がおすすめ!
REITは証券会社のほか銀行や生命保険・損害保険の代理店などで購入できます。しかし購入時にかかる手数料はそれぞれ異なります。
たとえばイオン銀行の場合、購入手数料は売買代金の2%を超えますが、ネットで購入する場合でも1%台となっています。たとえば10万円の売買代金であれば、1,000円を超えるくらいの手数料がかかるということです。
運用額が少ない方であれば、1,000円位ならいいか…と思ってしまいがちですが、その判断が後々の後悔につながります。
先述の通り、REITの平均利回りは3%台ですので、購入時に2%、管理(信託報酬)に1%…などと手数料を取られていては、利益を上げることが非常に難しくなるためです。
一方でネット証券であれば、REITの購入手数料を安く抑えることが可能です。これはREITが現物株式と同じ扱いであり、手数料も同じであることが理由です。多くのネット証券はREITの売買手数料を、売買代金が10万円までの場合100円前後となっています。
銀行とネット証券ではこれだけの手数料の違いがあるので、売買回数が多くなるとその差は大きく開きます。
おもな証券会社のREIT売買による手数料は、下表の通りです。
10万円 | 100万円 | 300万円 | |
DMM.com証券 | 88円 | 374円 | 660円 |
SBI証券 | 99円 | 535円 | 1,013円 |
楽天証券 | 99円 | 535円 | 1,013円 |
岡三証券 | 108円 | 660円 | 1,650円 |
auカブコム証券 | 99円 | 1,089円 | 3,069円 |
マネックス証券 | 110円 | 1,100円 | 3,300円 |
手数料以外にもそれぞれの証券会社が独自で行っているサービスなどに違いがありますので、使いやすそうな証券会社を選んでください。
まずは少額から投資を始めてみよう
REITは投資信託のように少額から始めることができるのが特徴です。しかも価格変動の緩やかな不動産で運用しているので、株式などのように大きく価格が変動する心配も少なく投資の初心者におすすめです。
その分、大きなリターンが期待できるというわけでもありませんが、投資を検討している方はまずは数万円程度から始めてみてはいかがでしょうか。NISA口座を使えば、配当金を得た時の税金面でも有利になります。
もちろん投資活動になるので元本割れのリスクはありますし、運用に関して疑問点や不安もあることでしょう。そのような方は初心者向けの投資セミナーに参加すると、わからないこともピンポイントで学ぶことができるのでおすすめです。