私たちは日頃から利回りという言葉をしばしば目にすることがあります。例えば、A不動産の広告には利回り12%と書かれたアパートが、B不動産の広告には利回り9%と書かれた中古マンションが…と、定期預金のキャンペーン金利が0.1~0.2%程度の昨今、非常に魅力的に見える数字が並んでいます。
しかし、利回りと一言で言っても、3種類の利回りが存在していることをご存知でしょうか?その3つが混在していることによって、投資初心者にとって判断が難しく、騙されやすい状況ができてしまっているのです。
今回は、ある意味数字のトリックのようにも思える利回りの真実についてお話しましょう。
不動産投資をするなら知っておきたい3つの利回り
利回りとは、投資した金額に対して得られる見込み収益の割合のことです。不動産投資における「利回り」には表面利回り・実質利回り・想定利回りの3種類あります。単に「利回り」と記載されていれば「表面利回り」のことを指します。表面利回りには管理費や租税公課、修繕積立金などの諸経費が含まれていないので、必然的に実際より高い数値になります。
投資物件を選択するときの判断基準として、表面利回りはあくまでも目安であるに過ぎず、参考程度と心得て、実質利回りやその他さまざまな要素に着目して総合的に判断しなければならないのです。
表面利回りとは
不動産投資において表面利回りとは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割った数字です。投資物件を紹介する広告などには一般的に表面利回りが使われています。
このように簡単に計算できるのですが、不動産を維持するためにかかる諸経費が含まれていないのに加えて、満室を想定した数値になっているため、「必ずこの程度の収益が得られる」ものと勘違いしないように注意する必要があります。
実質利回りとは
不動産投資において実質利回りとは、年間の家賃収入から諸経費(管理費・修繕積立金・固定資産税など)を差し引いた実質的な収益から、物件価格に購入時の諸経費(不動産仲介手数料・登記費用・印紙代など)を加算したもので割った数字です。
このように実質利回りには固定資産税や管理費、保険料、修繕積立金など不動産運用にかかる諸経費が含まれますので、先述の表面利回りと比較すると現実的な数値になります。
想定利回りとは
不動産投資において想定利回りとは満室を想定した場合の年間賃料合計収入を販売価格で割った数値です。
例えば、一部屋5万円・総戸数8戸のマンションの場合には、満室想定年実質利回り間賃料収入=賃料5万円×総戸数8戸×12ケ月=480万円となり、販売価格が5000万円であれば、その想定利回りは9.6%になります。
このように、想定利回りは、満室を想定した賃料に不動産価格を割ったもので、物件情報にも想定利回りで書かれていることがよくあります。計算のもととなる賃料もその物件の一番高い賃料で計算されている場合が多いため、利回りが高く出やすいという特徴がありますので、物件情報を見る場合には注意が必要です。
書かれている数字を鵜呑みにしてはいけません
実質利回りを計算しよう
広告に書かれている利回りに惑わされないためには、自分で計算できるようになっておくことが近道です。以下の具体例を使って計算してみましょう。
- 物件価格 3000万円
- 購入時諸費用 80万円
- 経費 30万円/年
- 家賃収入 180万円/年
- 表面利回り※東京23区内、築8年、中古マンション
実質利回りが高ければ安心できるのか?
3つの利回りの中で最も現実に近い実質利回りですが、それは、将来的な修繕費(例えば水回りや空調設備など)や空室が発生することを加味したものではありません。
特に将来的な賃貸需要があまり期待できない地域の物件などであれば、今の実質利回りが高くても、将来的には家賃を大幅に下げないと空室が埋まらないといったリスクが高い場合もありますで、特に地方の高利回り物件を購入する際は、利回りは参考程度と心得ておいた方が良いでしょう。
高利回り物件によくある欠点
最後に高利回り物件によくある欠点についてお伝えしておきましょう。
高利回りであるということは、ハイリスクでもある可能性が高いのです。
以下のような特徴が隠れていないか、購入前にチェックするようにしましょう。
- 駅から遠い
- 設備が古い・付いていない
- 使いにくい間取り
- 似たような物件が乱立している
- ファミリー向け物件だが学区が良くない
- 近くにスーパー、コンビニ等の施設がなく利便性に欠ける
- 近くに嫌悪施設がある
- 金融機関の融資評価がつかない
- 流動性が低い
まとめ
不動産投資において最もやってはならないことは、「利回りだけで物件の収益性の良し悪しを即断すること」です。利回りは不動産投資において重要な指標ではありますが、利回りのみに依存するのではなく、物件の適正家賃、物件の適正価格、長期にわたる安定した賃貸需要の有無、競争環境即ち競合する物件の件数や質などの諸要素を加味して総合的に判断しなければなりません。そのためには、利回りだけに振り回されず冷静な判断ができるように、不動産投資のベースとなる知識を身につけるべく、初心者向けのセミナー等に参加して学習することをお勧めします。